底に貼り付けた麻布が良く固化してから、お椀の内側に透漆にベンガラを混ぜた漆を塗り、その上にすぐに蒜山産の珪藻土を刷毛を用いて万遍に蒔きます。この方法の下地を「蒔き下地」と呼びますが、数ある下地作りの方法の中で最も強い下地と言われております。蒔き下地は三回行います。最初は珪藻土の粉末の大きいものを用い、二回目には中ぐらいのものを、三回目には粒子の細かいものを蒔きます。それぞれ蒔いた後は固化してから生漆を塗り強度を高めます。これを「粉固め(ふんがため)」と言います。蒜山の珪藻土は蒜山が数十万年前までは大きな淡水湖でしたが、鳥取県の大山が噴火したことにより湖水は流出し、湖にはびこっていた藻が堆積してできたものです。珪藻土としては品質が優れ、蒜山に工場を持つ株式会社昭和科学岡山工場が精製する珪藻土は、ビールの濾過材などに用いられております。蒜山の珪藻土は露天掘りされるほど豊富な埋蔵量を有しております。漆器で有名な輪島塗は、地元で採取される「地の紛(じのこ)」と呼ばれる珪藻土で下地を行っておりますが、生産量に限りがあるため、今では門外不出として輪島市から外には出さないことになりました。郷原漆器も当初は下地に砥の粉や地の紛を用いていましたが、蒜山産の珪藻土でより丈夫な下地ができることになりました。